芦生の地理: 水系と道

これから実習や調査,ガイドツアーなどで芦生を訪れる人,あるいはすでに1〜2回おとずれた人向けに,芦生の地理を大まかに説明してみる。

源流の集まるところ

まずは,関西地方における芦生研究林の立ち位置を確認してみよう。

  近畿地方

赤い部分が芦生研究林。KUとあるのは京都大学吉田キャンパスの位置。京都の街もこの位置である。青い線は川で,黒い線は流域の境界線(分水嶺)である。

よく言われるように,芦生研究林は日本海に注ぐ由良川の源流部を占めることが見て取れる。

また,ほぼ正方形である研究林の3つの境界は,

  • 北:日本海に直接注ぐ南川流域
  • 南:太平洋(大阪湾)に注ぐ桂川流域
  • 東:琵琶湖を経て桂川に合流する安曇川流域

に接していることもわかる。芦生は関西を代表する河川の源流を集めたような位置にあると言っていいだろう。

また,研究林を取り巻く4つの流域のうち,2つは日本海に注ぎ,2つは太平洋に注ぐ。つまり,芦生研究林の東南境界は中央分水嶺にあたり,研究林自体は日本海側に属する。多雪の気候はまさに日本海側のそれであるし,長治谷界隈のある尾根からは日本海がはっきりと見える。長治小屋では小浜の送信所からのNHK-FMがよく入る。

ちなみに,母方の祖父は中央分水嶺が好きだった。祖父が八ヶ岳の蓼科に別荘を作るための土地を選ぶとき,敷地内に中央分水嶺があるのが決め手だったという...

研究林内の水系

さて,先程の地図の芦生周辺を拡大したのが下の図である。

  林内水系

広い林内の拠点となっているのは研究林事務所である。ここには事務所,職員宿舎,利用者宿舎などがある。職員さんや先生が10名ほど,常勤している。一方で研究や実習の大部分は事務所周辺ではなく,「上流地域」で行われている。その上流の中核をなす拠点が,長治小屋である。長治谷という谷の出口にあるのでそう呼ばれている。

事務所のそばで由良川は大きく2つの流れに分かれていて,それぞれ,研究林中心部の高地を目指してのびている。長治小屋は林内でも特に北東の端にあり,南川流域(福井県)や安曇川流域(滋賀県)のほんの一歩手前である。

  事務所

研究林事務所。三角屋根がかわいい。

  長治小屋

長治小屋。ここでの生活を詳しく書いた記事はこちら

研究林内の道と地名

下図は林内の,特に主要な道路と地名を示している。

  林内水系

長治小屋も事務所もおなじ由良川に沿って立地している。しかし川が中央高地をぐるりと取り巻くように流れる一方で,道は由良川の流れに沿わないで最短ルートを通っているため,事務所から長治小屋へ車で移動すると,坂をのぼって峠を越し,坂をくだることになり,あたかも水系をまたいだかのように感じる。

敢えて言えば「本流水系」と「内杉谷水系」をまたいだのだ。両者の間の峠は「欅坂」という。

本流には,森林軌道の線路があるものの今は線路としては使用されていない。そのため本流方面は徒歩でしかアクセスできず,しぜん利用者も少ない。芦生研究林は広大(4200ha)であるものの,その大部分は教育研究に使われていないのは残念なことである。

さて,由良川上流は中山という場所で上谷と下谷に分かれる。かつてはここに中山作業所があった。本ホームページでは 中山作業所について詳しくも解説している ので,ぜひ読んでいただきたい。

上谷は長治小屋のさきで車道が途絶えていて,その先はとくに原生的な森林が残るエリアとして,実習やガイドツアーで必ず訪れる場所である。上谷を徒歩で登りつめたさきには,欅坂から分岐した車道があるので,バスを回送しておけば上谷を片道だけ歩いて通り抜けることができるのも,上谷ツアーの盛んな所以だろう。

一方で下谷には,芦生研究林のヌシとも言うべき大カツラの木がある。久しぶりに車を降りて近づくと,やはり大きい。大カツラはカツラだけではなく何種もの樹木と植物が合わさった「群れ」のような存在である。詳しくは,ぜひ芦生に訪れて教わってほしい。

下谷

左は上谷,右は下谷の大カツラ

さて,大体ここまでわかっておけば,車に揺られていてもだいたいどういった場所にいるのか意識できるようになるだろう。それに事務所で技官さんと林内の世間話をするのにも困らない。

(2023-Aug-4)